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はじめに
成年後見制度や地域福祉権利擁護事業は,身近に痴呆性高齢者や知的障害者などがいない者にとっては疎遠な制度であるかもしれない.そこで初めに,痴呆性高齢者や知的障害者の権利擁護に関する相談の実例をヒントとして,これらのシステムに関する具体的イメージを呈示してみたい.
高齢者が後見人や生活支援員を利用する例
〔例〕Aは,重度の痴呆症で80歳,年金収入120万円,自宅不動産とアパート1棟を所有している.親族(4親等内)はいるが遠方に住んでおり,Aの生活支援には関わりたくないと言っている.このような痴呆性高齢者が抱える課題は何であろうか.
1.在宅の場合
独居の痴呆性高齢者Aは,財産管理と身上監護について問題を抱えている.身上監護については,福祉行政(ケースワーカー)の関与に始まって,地域福祉権利擁護事業(後述,以下,地権事業と言う)による生活支援員の活用も可能である(一定の判断能力は前提).
Aは重度の痴呆であり,判断能力が著しく不十分であるから,成年後見制度(後述)の利用も検討されるべきである.この場合には以下の点が問題になる.
(イ)申請者 Aの親族の協力は得られないので,検察官か区市町村長による申請のみが可能である.検察官は実際上対応が難しいので,区市町村長の申し立てを検討せざるをえない.
(ロ)後見人 親族の協力が困難であれば,第三者に後見人を依頼することになる.本事例の場合には,本人が相当な財産を有しているので,弁護士や司法書士(リーガル・サポートセンターなど)に依頼することも実際上可能である.
(ハ)身上監護と後見人 後見人は,本人に代わって生活支援員,訪問看護,入浴サービス,給食サービス等に関する諸契約を締結することが可能である.訪問看護等ではケアが難しい状態であれば,後見人は施設入所を検討しなければならない.
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