Japanese
English
講座 排尿障害 5
前立腺肥大症にみられる排尿障害
Urinary dysfunction in benign prostatic hyperplasia.
藤田 喜一郎
1
,
本間 之夫
1
Kiichiro Fujita
1
,
Yukio Homma
1
1日本赤十字社医療センター泌尿器科
1Department of Urology, Japanese Red Cross Medical Center
キーワード:
閉塞症状
,
膀胱刺激症状
,
尿検査
,
超音波検査
,
α1遮断薬
Keyword:
閉塞症状
,
膀胱刺激症状
,
尿検査
,
超音波検査
,
α1遮断薬
pp.445-450
発行日 2006年5月10日
Published Date 2006/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100301
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前立腺肥大症の病態
前立腺の発生,増殖には,男性ホルモンであるテストステロンが関与している.アンドロゲン受容体にテストステロンが結合することにより,種々の増殖因子が活性化され,前立腺の間質および上皮細胞の増殖をきたす.また,アポトーシスの低下が起こり,細胞増殖と細胞死の均衡が破綻した結果,前立腺細胞の増生が生じる.前立腺は膀胱頸部から尿生殖隔膜までの尿道を取り囲むように存在するため,前立腺細胞の増生に伴って結節が尿道周囲に形成されると,尿道抵抗が増大し,尿勢低下などの排尿困難が生じる.そして,高い尿道抵抗下で尿流を維持するために膀胱内圧を増大させる必要が生じ,膀胱平滑筋の肥大など,膀胱機能に二次的な変化をきたし,次第に尿意切迫感,頻尿などの症状を呈するようになる.このように,前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH)の病態は,前立腺の腫大に伴う尿道の閉塞そのものと,その結果,二次的に生じる膀胱機能の異常との2つに分けて考えることができる.
BPHで増生するのは腺上皮細胞であるとしばしば考えられているが,実際には増殖した組織の60%は平滑筋細胞と結合組織で構成されている.平滑筋の収縮は交感神経系の支配を受けており,前立腺平滑筋細胞上のα1アドレナリン受容体がノルアドレナリンによる刺激を受け,前立腺平滑筋の緊張が増加し,尿道の抵抗が増大する.このようにBPHにみられる尿道閉塞の原因は,単に腫大した腺腫による尿道の物理的閉塞だけではなく,平滑筋の緊張による機能的閉塞が関与している.
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