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はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,severe acute respiratory syndrome coronavirus-2(SARS CoV-2)による全身感染症である.ワクチン接種や抗ウイルス薬の開発,臨床現場での活用が進むなかで,急性期の重症化率は低下傾向となり,2023年5月に世界保健機関(World Health Organization:WHO)より緊急事態宣言の終了が発表され,わが国では2類から5類感染症へ移行となった.
一方で,ワクチン接種の普及後もウイルス株の変異などに伴う新たな流行が生じ,感染の収束には至っていない.そうしたなかで,感染後に倦怠感や呼吸器症状などが長期間持続する患者の増加が問題となっている.報告により多少の差はあるものの,COVID-19患者の10〜20%が急性期症状の改善後も1か月以上「倦怠感」や「呼吸困難感」,「頭痛」などの症状を有し,日常生活や社会生活に大きな支障を来している1).SARS-CoV-2感染(もしくはその可能性)後,少なくとも2か月以上持続する症状があり,その症状が他の疾患に由来する可能性が否定された場合に新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(COVID-19罹患後症状あるいはlong COVID)と診断される2).
今年(2024年)6月に発表された米国科学・工学・医学アカデミーからの定義3)では,long COVIDは,SARS-CoV-2感染に関連する慢性疾患であり,1つ以上の臓器系に影響を及ぼす継続的・再発寛解的または進行性の病状が少なくとも3か月間継続する病態で,急性期の感染が認識されていない例についても含まれる.
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