連載 私のターニングポイント・第11回
できていないことを認めた先に成長がありました
北林 豊
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1訪問看護ステーションたつの訪問サービス
pp.1083
発行日 2020年9月15日
Published Date 2020/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202044
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今年で40歳になりました.病院で15年過ごし,3年前から最初の目標であった在宅期,維持期に従事しています.20代,30代の頃を思い出すと,自分を成長させてくれた多くの出会いがありました.
20代半ば,理学療法の業務に慣れてきたころに,患者さんとの関係がうまくいかないことを時々経験し悩みました.そんなときに,脳卒中を発症した医師である山田規畝子さんの著書『壊れた脳 生存する知』に出会いました.高次脳機能障害の苦悩と,困難に立ち向かう方法が描かれた名著です.リハビリテーション専門職に対し,「不用意な発言で患者のやる気をそいでしまっていることが少なくない」と指摘されています.うまくできていると勘違いしていた自分を戒めてくれました.研修会で学んだことを実践することに酔っていた自分がありました.問題のある「部位」だけを見て,落ち込んでいる「その人」への配慮のなさに気づきました.それ以降,理学療法の教科書を読む際は,冒頭の文章で著者の思いを知ること,理学療法の専門書以外の一般教養,心理学,倫理学,哲学など幅広く勉強することに,意識して取り組みました.
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