特集 変形性膝関節症に対する最新の保存療法
変形性膝関節症の理学療法における痛みの捉え方
平川 善之
1
Yoshiyuki Hirakawa
1
1福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
キーワード:
変形性膝関節症
,
膝痛
,
包括的評価
Keyword:
変形性膝関節症
,
膝痛
,
包括的評価
pp.327-335
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201166
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痛みを捉えるために
変形性膝関節症(knee osteoarthritis:以下,膝OA)は膝関節痛と機能障害によりADLおよびQOLの低下をもたらす疾患であり1,2),わが国の有病者数はX線画像上2530万人にのぼるとされ,うち有訴症者数は800万人に及ぶとの報告もある3).また膝OAなどの関節疾患は,介護保険法の要支援に至る第1要因4)とされている.これに対して,健康日本21では膝関節や腰部に痛みのある高齢者の割合が2010年は1,000人当たり男性218人,女性291人であるところを,2022年までに男性200人,女性260人に減少させることを目標に掲げている5).このように関節疾患による痛みへの対策は日本の重要な課題と位置づけられている.
一方で,痛みとは感覚(痛みの部位や強度,種類などを識別した身体的痛み感覚)・情動(痛みにより生じる不快感)・認知(過去の経験などと照らし,その痛みの意義を分析,認識すること)の3つの側面を有しているとされる6).つまり痛みは侵害刺激により生じるもののみではなく,個人の来歴や痛みに対する感情など多くの要因が関与することを意味している.膝OA患者を診る際に,患者の訴える痛みが画像所見と必ずしも一致しない症例や,同程度の関節変形像でも,症例により痛みの部位や範囲ならびにその強度が異なることを経験するのは,症例ごとに痛み要因が異なることに起因する.このことから膝OAの痛みを的確に捉えるためには,痛みを生み,増悪させる要因を整理し,理解したうえで患者の痛みを評価する必要がある.
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