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書評 —金岡恒治(編集)—「腰痛の病態別運動療法—体幹筋機能向上プログラム」
蒲田 和芳
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1広島国際大学保健医療学部リハビリテーション学科
pp.855
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200660
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編者である金岡先生の巻頭言には,大学病院勤務の整形外科医としての手術経験,スポーツドクターとしてのアスリートの腰痛診療,そして腰痛以外の種々のスポーツ障害との比較から,MRIなど画像診断にて検出されない腰痛の多くは,他のスポーツ障害と同様の機序で起こることが述べられている.そして,体幹筋の強化こそが,腰椎周囲の組織に過度なストレスを与えない「ニュートラルゾーン」での運動を保つために不可欠であることが強調されている.高いパフォーマンスを追求するアスリートの腰痛を治すうえで,筋機能向上を主体とした対策を講ずることは不可欠であるとともに,アスリート以外の腰痛にも当てはまる重要な概念である.すなわち,すべての腰痛診療に携わる臨床家に知っていただきたい概念である.
本書のタイトルにある「体幹筋機能向上プログラム」とは,伝統的な腹筋,背筋トレーニングを指すのではない.それは,著者ら自身の研究成果や多数の論文から得られた「エビデンスに基づく体幹筋機能向上法」であり,腰椎へのストレスを減弱するメカニズムが集約されたものである.シットアップ運動において,腹直筋と腸腰筋はどのタイミングで活動を強めるのか,といった率直な臨床的疑問に答える数多くの研究結果が紹介されており,腰痛の治療に携わる者としてたいへん参考になる情報が多数記載されていた.
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