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はじめに
現行の医療・介護保険制度では,急性期・回復期・生活期という機能分化型のリハビリテーションが確立しており,各時期の連携を深め,継ぎ目のない理学療法の実現が望まれていることは周知のとおりである.厚生労働省は,2025年(平成37年)を目途に「医療」,「介護」,「保健・予防」,「生活支援サービス」,「住まいと住まい方」を5つの柱とした,地域包括ケアシステムの構築を推進している.これは,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援という目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるための,地域の包括的な支援・サービス提供体制のことである.
諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行している日本では,理学療法の対象疾患である脳血管障害や脊髄損傷,大腿骨頸部骨折,変形性関節症,呼吸器疾患,心疾患などにおいて,高齢であるがゆえに認知症や慢性疾患など複雑かつ多様化した合併症を抱えている症例も多く存在する.この現実は,各種疾患別の診療ガイドラインや理学療法診療ガイドラインを参考にしながらも,より個別性を重視した対応が必要であることを意味しているのではなかろうか.
症例を担当する際には,対象者やその家族との信頼関係,医師や看護師,作業療法士,言語聴覚士,医療ソーシャルワーカーといった多職種との連携は必要不可欠となる.理学療法士の情報収集は,発症・受傷前のADLはもちろんのこと,姿勢や痛み,住宅および近隣を含めた生活環境,社会生活や活動性など多岐にわたる.それぞれの専門分野から得た情報は,症例を担当するチームとして集約・共有し,対象者と家族も交えて今後の目標を検討することで,初めて「生きた情報収集」となる.
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