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1.はじめに
戦後50年,社会福祉も大きな転換期を迎え,社会福祉構造改革1)が議論されている.戦後の社会福祉施策は,主として生活困窮者対策として出発してきた.それ故,限られた一部の人を対象とし,保護・救済が行われてきた.しかし,少子高齢化や社会の進展にともない,広く国民全体を対象とした施策の展開が期待されている.特に,心身に障害を負った寝たきりや痴呆の高齢者への対策は,緊急の課題である.
こうした新たな課題に対し,我々が描く生活の姿は,単に生活が保障されるのではなく,1人ひとりが個性ある生活を実現することにある.これを大きな視点からとらえ直すと,憲法25条の生存権の保障から,憲法13条の個性の尊重,幸福追求の権利へと,国民の意識が大きく変化してきているのが現状であろう.勿論,個性の尊重や幸福追求は,他の人々との関わりのなかにおいて実現されるものであり,社会福祉の理念でもあるノーマライゼーションの思想―隔離や排除の論理でなく,障害を持っていようとも,1人の人間としての人格が尊重され,一般の人々と対等で主体的な生活と参加を地域社会のなかで保障しようとする理念―が,その実現の方向性と指針を示しているものと位置づけている.こうした国民意識の変化のなかにあって,社会福祉も従来の保護的,事後的福祉から,予防的,支援的な福祉のあり方が求められている.
一方,リハビリテーション医療においても,入院治療から地域リハビリテーション活動2)への転換の必要性が叫ばれ,在宅生活を基盤とした生活支援の方法論の確立や,ケアマネージメント3)をはじめ具体的な援助の方法が模索されている.このような社会福祉の転換やリハビリテーション医療の変化を考えると,保健医療と社会福祉が統合された新たな学問領域の確立が求められており,とりわけ健康に関連した生活の質4)(healthrelated QOL)の解明が,我々に与えられた課題でもある.しかし,社会的要請がある反面,QOLといった新しくかつ抽象的な概念を対象とするだけに,研究は緒についたところであり,概念規定や測定道具の開発等,研究を進める上で多くの課題5)が山積している.
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