講座
社会福祉論—第4回 社会福祉の理念とその具体化(その2)—社会福祉の日本的特性
阪上 裕子
1
,
深沢 道子
1公衆衛生院行政学部
pp.715-719
発行日 1971年12月15日
Published Date 1971/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204386
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社会福祉の法的理念
現行の社会福祉法制は憲法を頂点とし,健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利を国が保障するための立法の一環をなすものとして位置づけられている.主要な法律はいずれも第二次世界大戦後に整備されたもので,個人の尊重,平等そして国や社会の責任をその基本理念としている.たとえば身体障害者福祉法の目的は「身体障害者の更生を援助し,その更生に必要な保護をおこない,もって身体障害者の福祉を図ること」(同法第1条)である.そして身体障害自身の更生への努力を要求する(第2条)ことと並んで,国や地方公共団体および国民に,身体障害者に対してその障害ゆえに不当な差別的取扱いをすることを禁じている(第3条).また生活保護法の原理は,公的責任の原則(第1条),無差別平等の原側(第2条),最低生活保障の原則(第3条),自立助長の原則(第4条)である.児童福祉法では,児童の健全育成が全国民の義務であり,すべての児童がひとしく生活保障と愛護をうける権利を有すること(第1条)を児童福祉の基本理念と規定している.そして国や地方公共団体が児童の健全育成に対して責任を有するにとを明らかにしている(第2条).さらに上記の基本理念が児童の福祉に関係する法令の施行において常に尊重されねばならないとしている(第3条).老人福祉法における老人福祉の基本理念は,老人は敬愛され,生活を保障されること(第2条),社会への寄与を期待されること(第3条1項),社会的活動や就労の機会を与えられること(第3条2項),そして国と地方公共団体が老人福祉の増進の責務を負うこと(第4条1項)である.
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