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1.はじめに
近年,医療技術の進歩により救命率が向上し,後遺症としての障害を随伴する人々や高齢障害者が急増する傾向にある.それらの人々は障害があっても,住み慣れた地域社会のなかでの在宅生活を希望することが多くなっている.このような状況のなかで,障害者や高齢者の日常生活を支援する福祉用具が数多く開発されている.福祉用具は障害をもつ人々の在宅生活を可能にし,その継続をもたらすものとして期待されている.国や都道府県は,「身体機能の維持」や「自立の促進」を促すものとして福祉用具を位置づけ,その給付内容や給付事業の拡大を図ってきている.
福祉用具は,従来の身体の構造や機能を補うといった目的にとどまらず,在宅での自立生活の維持や生活の質(QOL)にも影響を与えるものと位置づけられ,開発や給付が行われている.その反面,福祉用具を導入したものの,使い勝手が悪い,役に立たないといった理由で使用を中止したという報告も数多くみられる.
福祉用具には,住環境そのものに手を加えなければ使用できない大掛かりなものから,多少の工夫で十分な効果が得られるものまで多種多様なものがある.身体機能を代替・補完する機能のみならず,介護負担の軽減に寄与するものとして大きな期待が寄せられている.同居世帯の減少,女性の就労の増加等があいまって,これまで在宅介護を担っていた家族の介護力は低下し,それと連動する形で福祉用具に対する需要は急速に拡大している.
そのような状況のもとで,利用者のニーズに即した福祉用具の活用システムを開発し,利用者や家族の生活支援に有効に機能する用具として明確に位置づけることがますます重要になっている.そこで本論では,福祉用具の基本的な考え方や問題点を整理し,利用者の立場に立った効果的な導入方法について私見を述べることとする.
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