特集 産業理学療法
企業人(勤労者)を対象とした健康管理セミナーへの係わり―理学療法士の立場から
木村 朗
1
Kimura Akira
1
1専門学校社会医学技術学院理学療法学科
pp.737-741
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105153
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1.はじめに―きっかけ
筆者がこの分野に係わるようになった動機は,以前,臨床で出会った働き盛りの年代の患者の社会復帰先の状況の厳しさにあったと思う.患者の戻る職場の状況が,ちょうどバブル経済到来の前頃で,教育入院を経てコントロールできるようになったにもかかわらず,家庭や職場環境の影響で再びコントロール不良に陥る人を目の当たりにしたことから,その感が強くなっていった.
そのような状況のなかで,筆者は,ふと,理学療法学科の学生であった時に拝見したベルリン自由大学の先生による人間一労働システムの話のなかに,リハビリテーションと社会の接点を指向する種をいただいたことや,日本経営工学会アーゴノミクス学会への参加,労働省の助成による中高年労働者の健康管理を沖縄県の1企業を対象として行う研究の機会を得たことが,今日の健康管理セミナー講師に登用される機会につながったのではないかと思う.
そこで,障害を持ちながら職場復帰した人が強い運動負荷にもかかわらず黙々と一生懸命に働いていた姿を目撃し,どうにかしなくてはと思ったものである.また,大学院で専攻した保健学において,代謝疾患の運動療法を研究するかたわら,産業保健に係わる理論と技術を,国際的に活躍している先生から教授していただいたこと(マクロ理学療法なる造語?をつかうヒントをいただいた)が,従来から行われている産業保健における姿勢・疲労管理による腰痛症や頸肩腕症候群などへの関与とは異なる予防医学的活動,すなわち将来の血管障害の予防を目的とした生活習慣病の管理に携わるきっかけになっていると思う.
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