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1.はじめに
慢性進行性疾患のうちパーキンソン病(PD),脊髄小脳変性症(SCD),筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのいわる神経難病は,徐々に進行し,原因不明で治療方法が確立されていない疾患である.したがって神経難病が,重症例に対し発症の初期から高度で集中的な全身的管理を行う救急医療の対象になるのかとの疑問をもつかもしれない.しかし,医療技術の進歩やケア技術の向上により,従来では救命困難であった患者が種々の医療処置(膀胱カテーテル留置,自己導尿,経管栄養,吸引,気管切開,ネブライザー,人工呼吸器など)により,病院内から在宅療養に切り替えられる在宅ケアが急速に進展している.そのため,在宅での治療と管理,栄養や排泄などの日常の全身管理および適切な理学療法など,状態に合わせた種々の医療の提供が必要となってくる1).
更に神経難病は神経症状の特異性や様々な合併症から,一時的な体調不良や転倒など何らかのアクシデントが起こると容易に臥床生活に陥りやすく,障害が数段階進行することも珍しくない.したがって,救急医療およびリハビリテーションの充実を始めとし,再び速やかに在宅へ移行できるような医療機関内での診療体制の確立が急務である.そこで従来からいわれている慢性進行性疾患における理学療法の目的「可能なかぎり機能維持を図り,能力障害の進行を最小限に食い止めること」に加え,在宅療養を継続させるための「何らかの急変や状態変化を予測し,迅速な対応を可能とする」視点が必要である.
本稿では慢性進行性疾患のうち,神経難病の急性増悪と救急医療に焦点を当てながら,在宅療養継続における問題を整理し,理学療法の方向性について検討することを目的とした.対象疾患としては,神経難病の代表的疾患であるPD,SCD,また経過の特殊性から特別な援助が必要となるALSを中心に述べたい.
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