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1.はじめに
1997年12月の介護保険法成立に際し,参議院本会議は次のような一項を含む付帯決議を行っている.「“保険あって介護なし”とならないよう,介護保険法施行までに介護サービスに関する人材,施設等の基盤整備を着実に進めるとともに,地域間格差の解消に努めること.また,法施行後も高齢者の増加に対応して引き続き介護サービスの基盤整備の推進に努めること」が第1に挙げられ,政府に万全の対策を求めている.
高齢社会に向けたサービス資源の整備は,ゴールドプラン(1989年)による数量目標の設定で本格化し,1990年の「社会福祉関係8法改正」によって市町村を単位とする老人保健福祉計画の策定が方向づけられた.そして,市町村ごとのニーズや社会資源の地域特性を踏まえたサービス提供体制の整備を図る「老人保健福祉計画の策定」(1993年)は,さらに新ゴールドプラン(1994年)における計画目標の引き上げにつながった.
1999年度を目途とする新ゴールドプランの目標達成が急がれる一方で,介護保険の運営を市町村が担うことになったことから,保険給付に見合うサービス資源の整備・充足が市町村にとって最も大きな課題の1つとなってきた.このため,介護保険法の円滑なスタートに向けて「介護保険事業計画策定」(1999年)の準備に入ろうとしている.介護保険事業計画については,「市町村は,基本方針に即して,3年ごとに,5年を1期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という.)を定めるものとする」(介護保険法第117条)とし,“各年度における介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み”や“介護給付等対象サービスの種類ごとの見込量の確保の方策”などを定めることが規定されている.
言い換えれば,前者は被保険者の給付需要の測定調査であり,後者は給付需要に見合うサービス資源の整備計画を指している.この介護保険事業計画は,従来の“措置”による福祉から保険制度に転換するための保険事業(要介護または要支援状態)と給付の均衡を裏づけるものであり,また保険給付の質・量や保険サービスの将来像をも左右することから,被保険者・住民としてモニターしていくことが肝要である.
そこで本稿では,介護保険制度の発足から成熟への鍵を握り,また被保険者によるサービス選択の前提として周知が求められる各種の給付サービスについて概説するとともに,市町村レベルのサービス資源のマネジメントおよびケアマネジメントとの関連を検討したい.
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