特集 難病と理学療法
難病患者の理学療法―心に残る症例 2)エッセー
ALSとの関わりのなかで/ALS患者との歩みを振り返って/あるALS患者の理学療法を通して/ピアノを再び弾きたかったAさんとの邂逅/難病患者の理学療法について感じること
岡 十代香
1
,
川村 博文
2
,
坪田 由美
3
,
福元 賢吾
4
,
松田 尚之
5
Oka Toyoka
1
,
Kawamura Hirobumi
2
,
Tsubota Yumi
3
,
Fukumoto Kengo
4
,
Matsuda Naoyuki
5
1東京都多摩老人医療センターリハビリテーション科
2高知医科大学附属病院リハビリテーション部
3茅ヶ崎セントラルクリニック
4宮崎リハビリテーション学院理学療法学科
5福井リハビリテーション学院理学療法学科
pp.812-817
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104881
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神経難病患者のリハビリテーションに関わった11年の間に,数多くのALS患者さんに出会った.どの患者さんも「心に残る症例」ばかりで,同時に,理学療法士(PT)としては「悔いの残る症例」ばかりである.PTとして残る「悔い」とは,リハビリテーションの効果が得られがたいという致命的な問題を抱えているところに存在する.進行していく機能障害に対するアプローチのなかで身体機能面での改善・維持は極めて難しく,ましてや効果となると否定的にならざるを得ない.それならば,PTとしての視点を少し変えて,その疾患と付き合っていけばいいではないか,ALSに対する理学療法は狭義の目的で対処できるものではないのだから.これが,ALSとの関わりのなかで得たことである.
私がかつて在職していた東京都立神経病院は,神経系難病疾患の専門病院としての役割を担った病院で,私も,入院と在宅診療を通して数多くのALS患者さんに出会った.その1例1例が心に残る症例ばかりで,どの患者さんのことも家族のことも,ALSの治療の第一線から離れた今でも忘れることができない.神経病院では開院当初より神経難病に対する独自の取り組みがなされたが,ALS医療に関しては,病気の告知の是非,人工呼吸器装着の有無という点で確立していない時代があり,患者さんも様々な状況下におかれていた.
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