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Ⅰ.はじめに
国際学会に参加する機会が増えただけでなく,国内においてすら国際学会が開催されることが多くなった昨今である.国際会議といえば英語が公用語として用いられるのが一般的である.理学療法の分野では,1987年にオーストラリアで開催された世界理学療法連盟総会・学会までのofficial languageは英語,フランス語,スペイン語とされていたが,経費その他の問題で現在では英語に統一されている.英語は日本人にとって最も身近な外国語であり,受験戦争を乗り切ってきた世代にとっては“ほぼ完壁に近い”ともいえる英文法の心得があるはずである.
しかし,英語をnativeに話す外国人を前にするとなかなか会話ができないことを体験したことのある人が多いはずである.それは日本の英語教育が会話を無視してきたことと,受験英語が完壁な文法を要求するがゆえの弊害であろう.そのため我々は会話に参加しようとした場合,まず“完壁な”英語を頭の中で作文し,次に正確な発音でしゃべろうとする段階を踏まなければならないのである.会話の相手はこのようなプロセスに要する時間を待ってくれない.頭の中で作文ができ,いざしゃべろうと思ったとき,すでに次のトピックに話題が移っているといった具合である.
しかも,本当の会話をするためには自分のいいたいことをしゃべるだけでは十分とは言えない.相手の言っていることを十分理解できなければならないのである.この両方ができて初めて本来の会話と言えるのである.
本講座の執筆にあたり,筆者自身は英語を専門的に勉強した者ではないし,むしろ英語では人並み以上に苦労してきた経験があり,そしていまだ悪戦苦闘している現状であることをお断りしておきたい.
ここではいくつかの国際学会での場面を想定し,役に立つであろうと思われる会話の表現について述べていきたいと思う.その表現方法は状況に応じて微妙に変わってくるのでその代表的なものの一部を紹介する程度に止まることをお許しいただきたい.表現方法は異なっても基本的要領は全く日本での学会発表と同じであると理解してよい.
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