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はじめに
老人保健施設(老健施設)や特別養護老人ホーム(特養ホーム)での理学療法評価は,対象者が高齢者だけであるということを除けば,基本的には一般の医療機関での評価方法と何ら変わることはない.ただ,老健施設や特養ホームでは,対象となる高齢者の疾患や障害が急性期から回復期にあることは少なく,むしろ慢性期から維持期にあることが多いのが,その特徴であるといえる.
高齢者の理学療法評価に際しては,加齢に伴う生理機能の変化や老年疾患の特徴などの老年医学的知識と臨床経験が必要となることは述べるまでもない1).また,老年医学の領域では,単一の疾患や臓器障害などの形態・機能障害(impairment)の評価だけでなく,能力障害(disability)や社会的不利(handicap)にも視点を置いた評価の必要性が指摘されている2).このことは,リハビリテーション(リハビリ)医学領域における評価の考え方と共通する点が多く,リハビリ医学を学んだ理学療法士にとっては踏み込みやすい分野の1つであるかもしれない.
老年医学あるいはリハビリ医学のいずれにおいても,対象となる高齢者を1人の生活している人間として評価する態度が大切となる.老健施設や特養ホームでは,生活様式が在宅とは異なるものの,まさにそこが生活するための場であり(老健施設が生活の場であるか,通過施設であるかの意見は様々であるが),そこでの理学療法評価に際しては,単に方法論の問題だけではなく,そのほか留意すべき事項も数多く,限られた紙数ではそのすべてを網羅することは難しい.
そこで今回は,筆者が特養ホームにおける理学療法業務の経験のなかで,評価を実施するにあたって重要と思われた点について2,3論じてみることにした.また,紙数の許す限り,医療機関での理学療法評価ではみられない特殊性についても触れてみたい.
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