プログレス
理学療法と行動科学―コンプライアンスの問題
横田 一彦
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.52
発行日 1997年1月15日
Published Date 1997/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104674
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1.コンプライアンスとは
コンプライアンス(compliance)とは,保健医療従事者が患者の健康のために必要であると考え,勧めた指示(通院・服薬・食事・運動・仕事などに関する指示や助言)に患者が応じ,それを順守しようとすることと定義されている.逆に守らない場合はノンコンプライアンス(non-compliance)と呼ばれる.医師が処方した薬剤がどの程度忠実に服薬されているかという調査は,1960年代より行われており,当初はdrug defaulting,medication errorなどの,主として医師の指示に従わないという意味の強い用語が用いられていた.コンプライアンスという言葉は1970年代より用いられているが,「(他者による命令・指示などに)おとなしく従うこと」というやや消極的な意味のある言葉である.他に,患者の主体性を暗示する語として,patient adherence,patient participationという用語が用いられることがある.
コンプライアンスに関する研究は,これまでに慢性疾患患者における長期の服薬や通院に関する検討や,生活習慣や運動,食事に関するものまで,広範に検討がなされている.コンプライアンスにかかわる要因として,疾患の種類や患者の性格,指導の方法など多くのものが挙げられているが,患者に自覚的な症状(終痛などの身体的症状や直面している現実的な問題)がなく,生活様式の変更を強いられたり,複雑な治療法に対するコンプライアンスの悪さは明らかとなってきている.さらに重要な要因として,患者と医療従事者との関係や医療従事者の態度が挙げられている.
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