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1.はじめに
脳卒中片麻痺における装具療法は,基本的には機能訓練の補助手段として用いられており,従来から支柱付き短下肢装具が処方されてきた.これは尖足の矯正や外側T(またはY)ストラップを付けて内反をコントロールすることで,歩行の安定性を与えることを目的としたものである.しかし,1971年ごろからプラスチック(オルソレン製)装具が輸入されて以来,曲げ疲労に強いポリプロピレンの出現とその真空成形技術の導入によって,プラスチックの短下肢装具が飛躍的に進歩した.今日では,耐久性,支持性の両面で十分に実用性のある素材の開発が進み,靴にはめ込むことができるプラスチック製短下肢装具が主流となっている.さらには,より機能的かつコスメチックな装具が求められてきている.
その代表的なものとして,KU half AFOや湯之児型AFOなど全面支柱で足関節固定タイプがある.これらの短下肢装具は着脱が容易で,脳卒中片麻痺で痙縮があり,やや尖足傾向にある足に対し,背屈0°~5°に足部を保持することができる.また,前方支柱が下腿全面の筋群を促通するので,脳卒中などの痙性下肢には理論的にも適しているといわれているが,使用できる靴に制約があるなどの問題がある.
一方,従来から,最も簡便なものとして,短下肢軟性装具があり,つり上げ装具(足つり)がその代表的なものである.これは軽度の痙性麻痺に対して処方されることもあったが,下腿部への固定性に問題があったり,靴のフックの位置や靴などの問題(取り付けに手間がかかる)があって敬遠されてきた.しかし,下腿部の固定を工夫し,靴のフックの取り付け位置やつり上げゴムを調整することで,簡単かつ迅速に製作することができるし,最大の利点として靴が自由に選べることがあり,もっと使用されても良いと思われる.
そこで,つり上げ装具(足つり)を利用している患者のニーズに即応しながら工夫した点を紹介する.
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