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Ⅰ.はじめに
四肢麻痺,進行性麻痺などに罹患している障害者は,電動車椅子を屋内・屋外移動用に利用している.しかし,屋外移動に電動車椅子を利用している障害者から,車道と歩道間にある100~200mmの段差を乗り越えることができないため,行動範囲に制約を受けているという声も聞かれる.
JIS規格による電動車椅子の段差乗り越え高さは,25mmである1).一般的に利用されている電動車椅子(スズキモータチェア,MC13S)で実際に段差昇降可能な高さを計測した.その結果,段差に衝突するような前進走行で,50~60mm程度の段差であれば乗り越え可能であった.しかし,電動車椅子を使用して屋外を移動する際,60mm以上の段差はあらゆる所に存在し,電動車椅子利用者の走行や行動範囲に支障をきたしている2,3).
また今後,高齢・核家族社会の進展に伴う介助する側の質的変化の問題として,屋外移動で標準型車椅子を押す介助者が,高齢かつ病弱な者も多くなると予想される.そのような高齢病弱な介助者の体力では,段差が昇れないなどの標準型車椅子の操作に難渋することが考えられる.このことからも,病弱高齢な介助者が屋外移動に使用する介助用の標準型車椅子を電動車椅子に変更する際に,段差機構付きにすることの有用性が認められる4).
以上のことから著者らは,電動車椅子利用者の行動範囲の拡大と介助者の質的変化に対応することを目的に,車道と歩道間に存在する200mm程度の段差昇降ができるように,多くの障害者に使用されている電動車椅子に段差昇降機構を取り付けた段差昇降機構付き電動車椅子を試作した.試作機の段差昇降機構の検討と段差昇降試験を行ったので報告する.
ただし,本電動車椅子は,段差昇降機構付きとして,ある程度の成果を得たが,いまだ開発途中である.
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