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Ⅰ.初めに
われわれ民間病院で勤務する理学療法士にとって『診療報酬』は,無形の技術を唯一数字に置き換えることのできる指標であるかもしれない.
ただし,これはわれわれの,臨床上当然必要だと考えられる治療法すらも,時として否定しうるやっかいな存在であることも忘れてはならない事実である.
そういったやっかいものに一喜一憂された経験をもたれたかたも多いことと思う.
1.診療報酬の歴史的経緯
そもそも,我が国の医療界は,経済の高度成長期に伴い,また制限診療の撤廃や診療報酬の相い次ぐ引き上げ,さらに1973年の老人医療無料化なども相俟って“黄金時代”を迎えることとなった.その半面,一部医療機関の乱診乱療を招き,医療に対する批判の声も高まってきた.
このころより高度成長期も,オイルショックを機に翳(かげ)りが出てきた.
1978年から3年間も診療報酬改定が無く,1981年6月の改定では実質引き上げ率は,わずか1.7%(医科)というのはその象徴的な出来事だった.
このころから,薬価の大幅な引き下げ,検査料,注射料のまるめ,入院料の逓減制強化など診療報酬の合理化,適正化の時代に入り,医療にとって冬の到来となった.
1983年には,老人保健法施行に伴い70歳以上を対象とした老人診療報酬が創設され,一般病院と老人病院というように医療機関の特性に応じた診療報酬体系とする道が開けた.老人の長期入院の是正は,このころから言われ始めた.
このことは,現在国民所得の6.4%を占める国民医療費は20年後の2010年には低く見積もっても9.4%,高いと11.9%になるという見通しで,その中でも老齢人口の急増に伴う老人医療費の突出は大きく,特に入院料が大半を占めることからも,うなずける内容である.こうした方向がより明確に打ち出されたのが,1987年6月に厚生省が発表した『国民医療総合対策本部中間報告』だった.
これをバックボーンとして前回の1988年4月改定が行なわれ,具体的に施設類型について「中・長期的に病院の体系を慢性病院・一般病院に区分する方向で検討する」ことを明らかにした.そして,老人医療を中心に医療サービスの「供給管理」を目指した内容となっており,これによって一般(社会保険)および老人診療報酬の格差がさらに施設類型化が加速度的に拡がることとなった.
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