とびら
SCamp '88
今川 忠男
1
1南大阪療育園
pp.517
発行日 1989年8月15日
Published Date 1989/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102824
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何を選んだらいいのか迷っているのがチラッチラッと母親を見つめる視線から手にとるようにわかる.「お母さんがここに来て決めてよ.」と言っているようである.隣では,キャンプが始まってすぐに話しかけてきた同じ年格好の男の子が,「今日は少し風が強いので,水上スキーは明日にして,乗馬をしようかな.」と言って,自分で机の上にある申込書にサインをしている.「君はどうするの?」と彼が話しかけてくる英語が理解できないので,ますます不安そうな顔つきになってしまう.たまりかねた母親が近づいてきて,「アーチェリーやミニ・バイクをしたかったんでしょ.ほかにも楽しそうなスポーツがたくさんあるから,順番に予約をしてあげようか.」と援助の手をさしのべてきた.ホッとした顔をして「ウン」とうなずいたところで,ペップスターのLindaが優しく,ゆっくりとした口調で「自分がしたいことは自分で決めるのよ,咲恵,裕人,瞬.それにお母さんも自分の予定を立ててくださいね.」と間に入ってきて,子どもたちと両親を引き離してしまった.今度は,母親のほうが頼り無さそうな表情になって子どもたちを見つめながら両親たちの集団に戻っていった.
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