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現代社会にあっては種々の領域で専門分化が進み,システム全体の統合に対する取り組みと管理の重要性が指摘されています.保健・医療・福祉における多職種による様々な介入は,固有の対象者に独立的かつ総体としての帰結が問われます.たとえ,個々の介入が効果的であったと判定できても,全体としての効果が打ち消されてしまうようでは適切な方法とはいえません.
医療・福祉領域における理学療法は,対象者中心・参加型のチーム医療のなかで展開・実践され,理学療法士が行う介入が総体として最大の効果が得られるように構築していく必要があります.同時に,専門職に求められる固有の知識・技術の重要性は益々高まり,専門分化された独自性を明確にすることも大切です.これらの概念は,システムに対しても,個々の対象者に対する全人的ならびに局所的な症状についても当てはまります.対象者全体からみれば,生活機能を中核とした連続性と地域完結型医療を実現するための“連携”や連続性を重視し,局所症状に対しては種々の処置や治療の融合と相乗効果を検証することが求められます.例えば,痙縮の強い麻痺筋に対して,薬剤による筋緊張の調整,装具による持続伸張とアライメントの改善,物理療法による筋緊張亢進の軽減などが実施されます.その局所所見の評価法には,H波の計測,modified Ashworth Scale,振り子試験などがあり,それぞれの効果判定を行うことが可能です.しかし,その対象者にとって痙縮が高いことが生活機能にどのような支障を来しているのかを相対的に位置づけた上で,適切な介入を行うことが重要となります.また,歩行の獲得にあたり,どのような戦略で痙性歩行を実用的な歩行能力に適応していくのかを明らかにして,運動療法を組み立てていく必要があります.その際,例えば杖を使うことを想定したバランスと歩容を念頭においた運動療法を行うのであれば,全体の文脈の中で装具の適応と処方時期が決定されることになります.
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