書評
―宇野 彰(編著)―「高次神経機能障害の臨床実践入門」
前川 喜平
1
1東京慈恵会医科大学
pp.27
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102420
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最近,高次神経機能障害,高次脳機能障害の用語が盛んに使用されている.小児神経領域では,広義にはIQ70以上,狭義にはIQ85以上の小児にみられる高次脳機能障害と定義されている.先天性書字困難症,先天性読字困難症,先天性計算障害などと共に,広範性脳機能障害に基づく自閉症,Asperger症候などがこれに属する.小児神経を専門としている私にとって,成人神経学の知識で如何に発達障害を理解するか,成人神経学と小児神経学を如何にドッキングさせるかは私の長年の夢であった.
局在診断(Being),神経症候学(平山惠造),ベッドサイドの神経の診方等で成人神経学を勉強した私にとって本書のタイトルは非常に魅力的である.成人神経学と小児神経学の最大の相違は,成人神経学は完成された神経組織の障害に基づくものであるのに対し,小児神経学は発展途上の障害に基づく点である.胎生期から完成されるまでの障害の時期・程度・範囲により多様な症状を呈するのが特徴である.成人神経学の基礎である局在診断の知識はあまり役に立たず,脳障害の概念で理解せざるを得ないのが現状である.
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