とびら
生き方(逝き方)に関係できる理学療法士の力に誇りを感じて
赤羽根 誠
1
1医療法人秀友会在宅リハビリテーション
pp.669
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102359
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10年以上前になるが,知人のH医師に緩和ケアの病棟を案内されているとき,ある病室から「違うのぉ,違うのぉぉ」と細い泣き声が聞こえてきた.H医師と病室に入ると,白衣の方々とご家族らしき方々がベッドを囲んで硬直していた.H医師が,「どうしたのぉお~」と優しく,そして力強い声をかけた.白衣の方々の1人が非常に困った表情をしながら,小声で「○○さんはお花の先生なのですが,もう一度お花を生けたいと言われまして……,ですが……」と途切れ途切れに話した.
H医師は,ベッドに近づき,女性に「違うのぉ~」と声をかけた.女性は「自分で生けたいのです.でも,力が入らないんです」と弱々しく話した.そこで,H医師と私で女性に話しかけながら,女性の足が床に着くであろう高さまで電動ベッドの高さを低くした.その後,介助しながら女性にベッドの端に腰掛けてもらい,足はスリッパを履かず裸足のまま床に下ろしてもらった.H医師には女性の左側に腰掛けてもらい,ご家族らしき方には生花用の給水スポンジが入った花器を持ってもらい,私は女性の右側に腰掛けた.そして私は女性の胸郭右側面と前腕を支えた.
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