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はじめに
今春,国家試験に合格し,晴れて理学療法士となられた皆さん,おめでとうございます.昨年は本当に大変な年でした.何といっても,3月に起こった東日本大震災です.皆さんのなかには,東日本大震災の影響を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか.また,国家試験の問題傾向が少し変わったことで,合格率がやや下がり,不安だった方も多かったのではないでしょうか.
しかし,皆さんは無事に合格され,すでに国の認める理学療法士となられました.さあ,これから理学療法士として頑張るぞ,という気持ちと,自分にのしかかる大きな責任に対する不安と重圧感,新しい環境の中,先輩や同僚,他のスタッフとの人間関係に対する不安など,とても複雑な心境のなか,とにかく毎日,一生懸命頑張っているのではないでしょうか.
私は,理学療法士になって29年目になります.自分でも驚いています.私が新人のころは,今ほど世の中に理学療法士が存在しておらず,新人だから……という温かい配慮は全くなく,すぐに20人を超える患者さんを担当していました.また,医療の機能分化もなく,急性期病院に20年入院して,理学療法を毎日受けているという患者さんもいらっしゃいました.先輩から何かを教えてもらうというより,技術は見て盗め,という物作りの職人のような世界でした.そのような毎日のなか,「本当にこれでよいのか?」「このままでよいのか?」という不安から,研修会に出たり文献を読んだり,時間を見つけて誰かに相談したり,自分から発信しなければ誰も何も言ってくれませんでした.今ほど研修会がたくさん開催されているわけでもなく,簡単に情報が得られるわけでもなく,新人教育などもない状況でした.けれど,患者さんが歩けるようになること,できることが増えていくことが自分のことのように嬉しく,やりがいというものを感じていたような気がします.
今,皆さんが感じている不安感,期待感は,私が新人のころ感じていたものと同じだと思います.偉そうなことが言える立場ではありませんが,理学療法士として,人間として色々な失敗,挫折,喜びを経験し,そこから得た私の勝手な思いを述べさせていただきます.何かのお役に立つことができれば幸いです.
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