- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1966(昭和41)年,わが国に理学療法士が誕生し,2011(平成23)年には90,000人を超える理学療法士が登録されている.45年の歴史は,20歳過ぎで理学療法士として働き始めた人が定年を迎える期間にあたる.理学療法士のキャリアパスとして,ようやく第一段階の振り返りを始められる段階になったといえよう.現在でも第一線で指導的な役割を担っておられる先達は多く,これまでは理学療法士としての生涯にわたるキャリアパスやラダーモデルが存在しない状態で,個々の理学療法士がその道程を築いてきたことになる.
現代社会においては,少子高齢化,国際化,IT(information technology)化などから,ワークライフバランスにかかる多様な価値観に基づくキャリアデザインが模索されている.女性の職業観は結婚や出産・子育てとの葛藤につながる場合もあり,長引く景気の低迷は若者の就職活動や職業に対する考えかたにも大きな影響を与えている.2010年の春に大学か専門学校を卒業した52%は,就職しないか3年以内に離職している実態が明らかとなっている.この点について,学生が自己の適性をよく検討していない点や求職者と雇用者との意識の違いを改善する必要性が指摘されている.
理学療法士のキャリアデザインを考えるには,上記を踏まえた世界規模でキャリア行動や価値観に影響を与える諸点を考慮しつつ,理学療法の職業特性とわが国の理学療法士が置かれている現状を踏まえた検証が不可欠となる.なお,本稿の表題が意味する理学療法士とは,理学療法士免許(理学療法学を学び一定の成果を得た証)を有する者の活動を広く指し,狭義の理学療法を業とする内容に限定しない.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.