特集 糖尿病の理学療法
こんなときどうする―糖尿病合併症に対する症状別アプローチ
2.糖尿病性神経障害
浅田 史成
1
,
久保田 昌詞
2
,
大橋 誠
2
,
野村 誠
3
Fuminari Asada
1
1大阪労災病院勤労者予防医療センター運動指導部門
2大阪労災病院勤労者予防医療センター
3大阪労災病院糖尿病内科
pp.647-652
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102027
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
糖尿病性神経障害とは
糖尿病性神経障害は,脊髄(体性)神経,脳神経,自律神経などが侵される合併症で,最も高頻度に出現する合併症である.糖尿病性神経障害には,びまん性の四肢末端の感覚異常を主とした糖尿病性多発神経障害(diabetic polyneuropathy:以下,DPN)と内臓や血管,汗腺を支配する自律神経障害が含まれ,血栓などによる脳梗塞や血管炎などによる血管閉塞を原因とする外眼筋麻痺,躯幹筋麻痺のような局所性神経障害も認められている.また,びまん性および局所性以外の神経障害として治療後有痛性神経障害や併発型の絞扼性神経障害,神経根・神経叢障害や慢性炎症性神経炎などが存在する.これらの神経障害の分類の中で,DPNについては,「糖尿病性神経障害を考える会」により「糖尿病性多発神経障害の病期分類」1)が発表された.糖尿病性神経障害のうち,臨床上多く認められるのはDPNと自律神経障害であり,この重症化は糖尿病患者の運動を障害する主要因となる2).神経障害の病因に関しては,ポリオール代謝における律速酵素であるアルドース還元酵素活性化による補酵素NADPH過剰消費が主な要因と考えられている.その他の要因として,AGE/RAGE活性化や酸化ストレス,炎症反応,骨髄遊走細胞からの融合細胞の形成などが考えられる3).本稿では,理学療法士が知っておくべき糖尿病性神経障害のうち,主にDPNの評価方法,リスク管理,実際の理学療法について解説する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.