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リハビリテーション関係者,とりわけ理学療法士であれば,本書のタイトル「皮膚運動学」に先ず驚嘆するに違いない.関節や筋の運動学なら容易にイメージできるが,「皮膚」と運動学はどのように結びつくのだろうか? この点について筆者の福井先生は,ある日「肩関節屈曲制限を有する症例が・・・肩峰上で皮膚の皺があまりに大きく盛り上がっている」ことに気付くのである(この書評で写真をお見せできないのが実に残念!).しかもその皺を「取り除くように皮膚を動かす」と可動域が改善すると述べられている.この発見を端緒として新しい運動学の視点が本書では展開されることになる.
本書は第1章「皮膚運動の理論」と第2章「運動器疾患に対する治療への応用」から構成されている.第1章は4節から成り,皮膚運動の特徴,皮膚運動の基礎,皮膚運動の原則,運動器疾患への適応について詳細な写真とともに記述されている.たとえば皮膚運動の理論編では,運動に伴う皮膚の連続性について「皮膚は運動制限の原因にも結果にもなり得る」ことが指摘されている.さらに筆者は述べている.筋収縮との関連性については「皮膚は筋ほど動かない」ことこそ膝関節伸展運動の円滑性につながっている!と.つづいて「皮膚運動の基礎」では三次元解析の結果に基づいた皮膚運動の「誘導」の検証がいくつかの主要な関節ごとに示されている.皮膚運動の誘導とはいかなるものだろうか? この点については本書をお読みいただくほかないのであるが,このことが次の章「治療への応用」に展開されるのである.第2章では,肩甲帯から体幹,姿勢に至るそれぞれの関節運動の改善についてより具体的な手技が精細な写真とともに供される.たとえば足関節背屈制限に対して,可動域改善方法として「アキレス腱部に皮膚が集まるように誘導する」ことで,効果が得られることが紹介されている.本書の後半には,これらの皮膚運動学による実際の症例への適用例が供覧される.
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