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制約療法とは,constraint-induced movement therapyであり,本邦ではCI療法,抑制療法と訳される場合が多い.制約療法は,非麻痺側の上肢をミトンや三角巾を被せる,お尻の下に手を敷くなどの方法で抑制することで麻痺側上肢を強制的に使用し,上肢機能の改善を得ようとする治療法である.その際重要なことは,難易度を調整した段階的な課題(練習課題)を短期集中的に実施することである.脳卒中片麻痺の麻痺側上肢への制約療法は,20年以上前から数多くのrandomized controlled trial(RCT)により,特に慢性期の片麻痺上肢に対する効果が実証され,脳卒中治療ガイドライン(2009年)においても高いエビデンス(Ⅰb)として推奨されている1).制約療法には,麻痺した手で今まで通りの動作を行おうとしても上手く行えず,それが続くことでその手を使わなくなってしまう学習性不使用(learned non use)の悪循環を断ち切る目的がある.さらに非麻痺側を抑制することは非麻痺側から健側脳への入力を減少させ,損傷脳の可塑性を促進すると考えられる.これは単に麻痺手の使用を促すだけではなく,脳卒中により傷害された脳のネットワークが再構築される「使用依存性脳機能再構築」によると考えられ,治療前後での大脳皮質マップの変化が証明されてきている2).制約療法の適応基準は,一般的に手関節の随意的伸展が20°以上可能であること,手指の3指のMP関節およびPIP関節が10°以上伸展可能なこととされ,脳卒中片麻痺患者の1/4程度が適応となると言われている.実施時間としては,1日あたり6時間の麻痺側上肢のリハビリテーションプログラムを2週間行う方法が標準的であるが,1日あたり2時間の実施や外来リハビリテーションでの効果も報告され,症例に応じた量を設定することが必要である3).
制約療法では,様々な難易度を調整した動作を行い,関節運動にこだわりすぎず,課題自体の達成感を重視した課題指向的トレーニング(task oriented training)を行うことが最も重要である.課題の例として,佐野ら2)が両手動作を加えた60項目をシェイピング項目として紹介している.シェイピングとは,少しずつ目標を上げながら最終目標=標的動作を達成することをいい,課題としては獲得するべき具体的な標的動作を設定し,その動作を達成するために難易度に応じた数段階のステップを設定していくことが必要である.さらに標的動作の設定は,学習者である患者の機能障害に応じて設定する必要がある.
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