1ページ講座 義肢装具
TSB下腿義足
原 和彦
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1埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
pp.258
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101904
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膝蓋腱荷重(PTB)式といった圧の差別化に代わって圧の均等化を提唱した全表面荷重式(total surface bearing:TSB)下腿義足は,1990年以降にわが国に導入されて近年普及化が進んでいる.またTSBは元来,ソケットがシリコン素材などに限定されるものではなく,断端表面に密着して断端全体で体重を受けるといった適合概念を持つものである.TSBの膝蓋腱レベルの水平断面形状は,PTBのように膝窩部後方からのカウンターフォースを意識しない形状を持つ(図).このため,後壁がPTBに比べて1~2cm低く製作されていて,100°程度までの膝屈曲が可能となり,ADL上の装着性が向上している.
1986年にKristinsson(オズール社)の提唱したIceross(Icelandic roll-on silicone socket)はシリコン素材を採用した内ソケットを有し,シリコン素材が骨張った断端組織に対して形状を変えて荷重圧の均等化を行うTSBの適合概念を満たしていた.①ライナー内面との剪断力を吸収して断端の皮膚のトラブルを防ぐ,②内ソケットのシリコンライナーと,熱硬化性樹脂製の外ソケットを接合するシャトル・ロックやキャッチピンを有することで高い義足懸垂性を有するなどの高い利点を持つ適合法として紹介されたことから,現在のTSBソケットには通常シリコン素材のライナーが好んで用いられている.
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