特集 院長
院長某月某日
いろいろな制約の中で
中村 善紀
1
1国立松本病院
pp.43
発行日 1969年12月1日
Published Date 1969/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203818
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9月も末になったが,秋の日ざしはまだきびしい.しかし肌にふれる空気はさわやかである.8時40分,総婦長が看護日誌をもって報告にくる.各科入院患者の状況を聞く.つづいて事務長が病院新築工事の第2期工事入札の打ち合わせにくる.最近の入札はなかなか円滑にいかないという.
今日は外来診療日.内科外来の待合室はもういっぱいで,患者は廊下まであふれている.患者は北は大町,麻績(おみ)から,南は塩尻・木曽方面から列車や車でやってくる.病院構内も駐車する車でいっぱいで困っている,‘てきなくて(疲れて)しようがないので,よく診てくだせい’‘咳をしたら血がでたのでおどけた(驚いた).いちゃついて飛んできた(いそいできた)’などの方言もだいぶわかるようになったのも松本へきて3年になるからだ.患者の待ち時間が長いのが悩みの種だが,このへんでは予約制もむずかしい.遠くから来る患者のためにはまた来院させるのも気の毒だし,汽車賃も安くないので,できるだけその日にX線写真を現像したりして診断をつけるように便宜を計っている.外来が終わったのが1時半.食事をとってひと休み.午後3時から若いドクターのために気管支造影をしてみせる.女の患者で長いこと療養所にいたとか,結核菌は一度もでていない.透視下にカテーテルから造影剤を入れると左下葉気管支に広汎な拡張症が現われた.
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