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はじめに
股関節のX線画像は,乳幼児の先天性股関節脱臼,幼児期のペルテス病,大腿骨頭すべり症,成人の臼蓋形成不全や変形性股関節症,さらに高齢者の大腿骨頸部骨折などの診断の際に,広範囲な年齢層を対象に撮影される.重心位置が骨盤内に存在する場合,股関節はその最も近くにある自由度の高い重要な関節である.したがって,股関節に疼痛や変形などが生じれば,歩行など抗重力位での活動に影響し,股関節機能が回復すれば,それは改善する.
股関節の機能評価においてX線画像は大変重要で,理学療法に欠かすことのできない情報となることは言うまでもない.今回,変形性股関節症を中心に,理学療法士の着眼点から,臨床上必要とされる画像のみかたについて解説したい.
骨・関節の変形性疾患は,力学的な負荷(メカニカルストレス)により,関節に構築学的な負担がかかることで変形を来し,疼痛などを引き起こす.長い経過で関節変形が起こり,その程度や様相は,それまでにどのような負荷がかかっていたかを物語る.それらの力学的な負荷を画像から読み取り,変形のプロセスを理解できれば,画像診断法は理学療法の戦略として有効な評価手段となる.また,X線画像撮影は診断だけでなく,経過観察や治療法を決めるために欠かせない検査である.
変形性股関節症は,変形により,関節の軟骨がすり減ることによって起こる.X線画像では,骨は写るが軟骨は写らないため,寛骨臼と大腿骨頭間の距離や関節裂隙と骨の状態を注意深く観察して,病期の診断と治療手段が検討される1).
理学療法士はX線画像によって,手術法や病期の進行・変化を確認し,さらに,保存療法の経過観察と効果判定を行う.また,人工股関節置換術後や骨切り術後の合併症の確認を行う.特に理学療法士は,股関節正面X線画像から骨盤の形状を解剖学的にとらえるのみでなく,下肢・脊柱のアライメントを把握し,動作・姿勢の評価に客観性をもたせることが重要である.このようなX線画像と,理学療法士の行う検査測定の数値,患者の姿勢動作の分析,体表の触診などによって,患者を総合的に評価することが可能となる.
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