なぜ学ぶのか・12
生理学―障害を理解するためには正常な生体機能を知ることが大切です
古我 知成
1
Koga Tomoshige
1
1川崎医療福祉大学リハビリテーション学科
pp.362-364
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101401
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生理学は知れば知るほど人に優しくなれる学問です
「理学療法は障害について知るところから始まる」というのは,誰も異論のないところでしょう.しかし,障害について詳しく知るためには,まず正常な生体機能を知る必要があります.生理学は正常な生体機能を追求することを前提としていますが,脳の働きなどには未知の部分が多く,どうしても不幸にして障害をもたれた事例からその機能を解説しなければならない場面もたくさんあります.
先日テレビをみていましたら,プラダーウィリー症候群について紹介されていました.この病気は遺伝子異常によって起きることが知られており,テレビで紹介された少女は驚くべきことに,どんなに食べても満腹感を得ることができないのだそうです.自分の意志により摂食をやめることができず,ついに160kgを超える巨体になっていました.食事をやめさせる因子として,血中の代謝産物や脂肪組織からのホルモンなどが知られていますが,視床下部の満腹中枢の働きが決定的に重要です.私も生理学の講義でびっくりするほどの肥満ネコの画像を提示し,満腹中枢の所在部位である腹内側核が破壊されるといかに食欲をコントロールできなくなるかを紹介しています.
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