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編集後記
吉尾 雅春
pp.720
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101243
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7月7~9日にかけて北海道洞爺湖サミットが開催されましたが,北海道では春からサミット終了まで,いたる所で厳重な警備態勢がしかれました.各国の政府専用機がずらりと並んだ千歳空港周辺や洞爺湖畔だけではなく,田舎の国道でも検問を行っていましたし,山菜採りに行った山中でパトカーを見かけたこともあります.わが家のすぐ近くにはG8某国の領事館がありますが,4月からサミット終了まで,アリが入り込む隙間もないくらいの厳戒態勢で,おかげさまでその期間は非常に安全な街になっていました.とりあえず,大きな事件・事故もなく終了し,各方面の関係者は安堵されたことでしょう.
サミットに先立って,札幌では登山家の野口健氏による環境フォーラムが開かれました.地球温暖化を主題とした講演とシンポジウムで構成されていましたが,野口氏の実体験に基づくヒマラヤの氷河の現状報告には説得力がありました.会場には,地球温暖化によって海中に消えゆくであろうと言われる南洋の国ツバルを写真で報告し続けている遠藤秀一氏の姿もあり,自身の生活のあり方を改めて問い直すよい機会になりました.しかし,環境サミットとさえ言われた北海道洞爺湖サミットの総括を聞いた時,サミット期間中,洞爺湖一帯がほとんど晴れ間を見せなかったことと重ねて受け止めたのは,私だけではなかったかもしれません.「世界は地球環境と食料問題などを中心にparadigm shiftしていくべきである」とその道の専門家たちは声を揃えて述べていましたが,地球よりもそれぞれの国益が優先されるという展望のない結論に私は落胆してしまいました.
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