特集 認知運動療法の臨床アプローチと効果
骨関節疾患に対する認知運動療法の臨床アプローチと効果
千鳥 司浩
1
Chidori Kazuhiro
1
1中部学院大学リハビリテーション学部理学療法学科
pp.277-284
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101146
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はじめに
骨関節疾患は関節や効果器そのものの損傷であるため,リハビリテーションで取り扱う諸問題においても,末梢の筋や関節などの器官の構造的な機能異常を重要視することが多い.障害を受けた諸器官を直接的に治療対象とする従来の治療戦略により,関節拘縮や筋力低下などの機能障害に関する問題は解決しやすいが,それらが改善しても歩行などの動作にうまく結びつかないことがある.具体的には,中殿筋の筋力が十分回復してもトレンデンブルグ現象が出現している症例や,膝関節の可動域が十分獲得されていても歩行時にはいわゆる棒足歩行を呈する症例などが挙げられる.これらのことより,損傷部位そのものを治療していくだけでは不十分であり,パフォーマンスを構築し制御している脳においても,何らかの変質があることについて注目する必要性に気づく.
この点について,イタリアの神経科医Calro Perfettiが提唱する認知運動療法(esercizio terapeutico conoscitivo:ETC)1)と呼ばれる治療システムは極めて興味深い.認知運動療法とは,運動を身体が外部環境と相互作用を行うための手段として捉え,それを実現しているのは脳における認知過程であるとする理論に立脚して,運動療法の介入手段を構築したものである.その理論は,中枢神経疾患や骨関節疾患をはじめとして幅広く適用されている.本稿では,まず認知運動療法の基本概念,骨関節疾患における病態解釈について述べ,関節拘縮や跛行に対する治療展開について解説する.
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