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編集後記
内山 靖
pp.872
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101048
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今日では,行政をはじめ教育・医療を含めたすべての領域で“説明責任”の重要性が強調されている.これに関連して,同意書,セカンド・オピニオン,倫理審査,個人情報保護など,対象者の利益となる方法が実行されている.当事者にとって,わかりやすい説明による理解と安心を得る目的で実施された諸制度は時代の要請でもある.かつて聖域といわれた医療と教育も国民の信頼を得るには至らず,むしろ密室での非合理な行為や独善的な判断が白日にさらされる事件も少なくない.専門職は国民が求めていることが形式的な資料や説明の羅列ではないことに真摯に応えなくてはならない.理学療法士もその数が増えて,魅力的で質の高い人が増える一方で,残念ながら不適切な行為をする者がいる.これを確率論で済ませるのではなく,教育や生涯学習の中で組織として対応する努力を怠ってはならないであろう.
専門職は,良心と法律ならびに専門の知識と技術を十分に理解したうえで,対象者の立場に立った判断と適用には一定の裁量が与えられている.越権や独善は厳に慎まなければならないが,裁量権を放棄したマニュアルの遂行のみでは専門職の存在意義はない.最近ではエビデンスに基づく医療の展開が求められているが,これはガイドラインを遵守することではない.あくまでも,最善のエビデンスを目の前の対象者に思慮深く適用する過程であり,その臨床判断能力こそが専門職に期待されているものである.かつて,“私がルールブックだ”といった審判がいたが,1つの判断をすることに責任をもち併せて判断を避けることがあってはならないと感じる.
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