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編集後記
高橋 正明
pp.442
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100977
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「暖かな冬が終わり,いよいよ寒い春が訪れました」と,まるで季語が逆転してしまいそうな春の訪れである.温暖化,エルニーニョ現象など,地球規模の説明がなされればなされるほど,「だから我慢しなさい」と聞こえてならない.ずっと以前,どなたかの講演で,社会科学は自然科学を乗り越えられないのかというテーマのお話を聞いた.
これまで,人類は社会で生じる様々な問題を物の発明で解決してきた.
例えば,中世では暖をとるために壁の中に通気穴をはりめぐらし,そこにもぐり込める子ども達が掃除をしていた.掃除中であることが気づかれず,暖炉に火が入れられて多くの子ども達が事故死した.それを解決したのはストーブの発明であったという.いまだに印象に残っている話である.暖をとる発明に連動して,暑いときに涼をとる器具が作られた.これはそれ以上の暖気を周囲にまき散らす.産業の発展に伴い,気がつけば地球全体が暖房の中に入ってしまった.温暖化という民族や人種,宗教を超えた,そして自然科学分野の人智ではもはや抑え込むことができない問題へと発展してしまったのである.社会科学の人智にしか救いは見いだせそうもないが,過去の歴史が繰り返されるならば,温暖化がとてもお寒い話となってしまう.しゃれや冗談では済まされないことがさらに辛い.
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