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編集後記
高橋 正明
pp.448
発行日 2001年6月15日
Published Date 2001/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105830
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ニュースソースによって若干の違いはあるものの,この春に誕生した小泉新内閣が設立早々空前の支持率を記録した.何とも言いようのないこの閉塞状態の中に,世論はそれを打破する一条の光明を見たのか,あるいは幻想を抱いたか,明快な答えに希望と安寧を求める庶民の心情を象徴したかのようなできごとである.
そんな時代だからというわけではないが,本特集では,理学療法の基本中の基本でありながら,歴史的認識でしかないはずのデロームやミューラーの方法が横並び的に教科書に登場するわが国の筋力増強を「筋力再検討」のタイトルのもとに取り上げた.1940年代に始まった一般的な筋力強化法の議論は1980年頃には下火になり,1990年にアメリカスポーツ医学協会(ACSM)が発表した見解でほぼ収束したといえよう.しかしながらわが国では,筋力の諸側面が時間を超えて混在しており,それに終止符を打つべく岡西氏には筋力強化法の歴史をダイナミックにレビューすることをお願いした.また,理学療法士には筋肥大あるいは筋増量のメカニズムの知識が意外と乏しい.筋力再検討とは少し意を異にするが,半分はその目的で後藤氏と吉岡氏に原稿を依頼した.時代を反映してミクロの研究は急速に進んでいるが,マクロはまさに牛歩のごとくであることを教えていただいた.それでも,筋線維の数は変わらないといつまでも後生大事に思い続けていると,マクロの分野でもそう遠からず置いていかれることも知らされた.
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