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はじめに
当院のnutrition support team(栄養サポートチーム:以下,NST)活動は,2005(平成17)年10月のNST委員会発足により開始された.2005年10月より2006年4月までは全病棟の入院患者を対象に,2006年4月からは回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)入院患者を対象に栄養サポートを実施してきた.この活動に際し,リハビリ科(以下,当科)ではNST委員会に理学療法士が委員として参加し,栄養情報を患者の能力向上に役立てている.
入院患者の年齢が比較的高齢である当院では,経口摂取可能な低栄養状態の高齢者に対して,栄養状態改善を目標に独自のNSTスコアを設定し,NST活動を行ってきた.経口摂取が可能でありながらも,低栄養状態にある患者は,従来のNSTスコアではフォローしきれなかった部分であった.しかし,在宅復帰に向けての治療が進む中でそれらは障害の1つとなる場合が多い.また,リハビリテーション(以下,リハビリ)の観点からも,低栄養状態の持続は筋力向上,能力獲得の妨げとなるばかりでなく,リハビリに対する意欲を削ぐことにもなりかねない.そこで,当科では患者の栄養状態に合わせたリハビリの負荷を探り,運動強度の設定に役立てている.
基本的に低栄養状態の患者は病棟での自発的な動きが少なく,ベッド上生活であることが多い.そのような状態では,最大のエネルギー消費動作はリハビリでの運動ではないかと考える.筋力向上のためには,筋線維の破壊と再生が不可欠である.また,動作獲得のための運動でも,多量のエネルギーを必要とする.低栄養状態のベッド上生活患者に立位,歩行運動を実施しても,運動を上回る栄養の補給がなければ,能力の向上は緩慢であるか,あるいは疲労のために低下していく.リハビリでの運動と,能力向上のためには,安定した栄養状態の維持が不可欠であると考える.さらに,NSTにおける簡易的骨格筋量の評価と動作能力を加味し,低栄養状態の患者の筋力増強運動において,セラピストが狙った通りの筋肥大が起きているか否かを定期的に再評価し,運動内容の再検討を図ることが重要である.また,リハビリスタッフも栄養状態の改善を待って,より負荷の高い運動を指導するよう心がけるべきと考える.
しかし,個々の患者の消費エネルギー量と摂取エネルギー量を正確に把握することは非常に困難であり,現在のところ,栄養状態のデータがリハビリの客観的運動効果に直結する要素にはなり得ていない.当科では,非常に重要でありながらも活用方法が難しいこの栄養情報を極力利用し,運動効果を高めるために活動している.本稿では当院のNST活動の概略と,症例について報告する.
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