特集 「注意」の障害に対する理学療法
「注意」の障害に対する理学療法評価
杉原 俊一
1
Sugihara Shun-ichi
1
1医療法人秀友会札幌秀友会病院リハビリテーション科
pp.1045-1048
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100930
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理学療法の周辺では,回復期リハビリテーション病棟や地域で活動する理学療法士(以下PT)の数が増えており,理学療法室から飛び出して実生活場面におけるPTの活躍が期待されている.
理学療法室で行っていた「歩行」から目的を伴った「行動」へとPTの意識も変化し,「ものに衝突しないよう注意して歩く,バランスを崩さないよう注意しながらものを取る」などの実生活場面にかかわるPTも多い1,2).日常生活の行為は身体と周囲の環境との関係を適切に処理することで成立しており,関連する視覚,体性感覚,聴覚などのあらゆる感覚モダリティと運動機能の連関を意識したかかわりが必要となる.動物は興味を引く対象物が視野内に現れると,素早く視線をそれに向ける.下等な動物では眼球運動よりも頭部や体幹の運動が主であるが,ヒトでは眼球運動だけの注視が可能となり,視線の動きが大きい場合は頭部の運動が重要となる3).注意については難しい問題ではあるが,今もっている脳の機能を患者はどのように選択し,どういうふうに振り分けているかを考えることが必要となる.「注意」そのものは観察不可能な事象ではあるが,注意の結果によって生じる行動を観察することは可能である.
本稿では観察される臨床場面の「注意」の問題について,PTが観察可能な場面を通して「注意」の障害としての評価について考えてみたい.
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