理学療法の現場から
理学療法記録に思うこと
湯元 均
1
1時計台病院リハビリテーション部
pp.786
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100887
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近年,医療訴訟に関するニュースをよく目にするようになった.この背景には,複雑化・高度化する医療事情の他,治療を受ける患者側にも医療に関する関心が高まり,一緒に治療に参加するといった意識の変化ということがあると考える.また,訴訟に関する変化としては,以前は患者側が医療側のミスを証明することを要求されていたが,近年は医療者側が医療ミスのなかったことを証明しなければならないといった変化もその背景にあると考える.
以前に耳にした話であるが,ある病院で真夜中に患者が窓から転落し死亡するといった事故があった.家族側は,ベッドが窓のそばに置かれていたため,開いていた窓から誤って転落したとして病院側の安全管理ミスがあったと主張し,訴訟が起こされた.しかし,病院側は,やや雑記帳的な内容であったが詳細な患者の心理状態や言動が記載されていた看護記録(状況的に鬱状態であると判断される内容),当夜は気象庁への確認で雨であったという事実,および準夜帯の見回り時に窓が閉まっていることが確認されていたという証言などを提示した.これらより,本人が故意に窓を開けなければ転落しなかったとして,病院側には安全管理ミスがなかったとの判断が下された.
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