特集 診療録の保存と利用
日本と米国の診療記録に思う—利用価値のある診療記録にするために
本間 襄
1
1同愛記念病院放射線科
pp.218-221
発行日 1980年3月1日
Published Date 1980/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207102
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編集部から日本と米国での診療記録の利用され方の違いについて書くようにとの話があった.しかし相違を考えることは両国の診療記録が,内容・質において大体同じレベルにあってはじめて可能となるのであって,残念ながら日本の診療記録の多くは,未だ同じ俎上に載せ得る質に達していないと考えた.
昨年欧州で日本人は兎小屋に住む働き蜂……と評されたことが話題になったが,住以外に未だ欧米のレベルに達していないものの一つに病院がある.外国のそれと比較して遜色のないホテルや文化施設があるにもかかわらず,最も身近かで重要な問題の,一般の人が日常受けている病院医療の質はどうであろうか.日本の医学には世界的な研究や技術もあるが,平均した質の点では欧米と同程度のレベルに達している病院が余りにも少ないと思う.その差は「診療記録の内容を重視し集中管理する方式」がほとんどの病院で採られていないことによる.診療記録を日常診療や研究などに役立てるには,その要求に答え得る内容と質をもった記録を作らなければならない.日本の診療記録の中で最も足りないのは医師の記録であろう,看護婦は忙しい間をぬって細かいことも記録しているように思う.以下どのようにすれば医師の記載を豊かにし内容の充実がはかられるかを考えてみたい.
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