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変形性膝関節症は,膝関節疾患の中では日常診療で最も遭遇する機会の多い疾患である.膝に限らず関節症は,関節軟骨の変性,摩耗に始まり,軟骨下骨の硬化,骨棘や骨囊胞の形成,関節液の貯留や軟部組織の弛緩,関節面の陥凹などにより,関節の変形に至る疾患である1).その臨床症状は関節可動域制限と疼痛が主であり,その中の疼痛に対する理学療法としては日常的に物理療法を施行しているのがほとんどであろう.変形性膝関節症に対する物理療法の効果については,数多くの報告がなされているが,主症状である痛みについての詳細が報告されたものは少ない.そこで今回,われわれは疼痛を主症状とする変形性膝関節症に対し,疼痛の性状の評価として用いるThe short form of McGill Pain Questionnaire(以下SF-MPQ)を指標として,広帯域多重複合波通電効果の臨床的検討を試みた.
広帯域多重複合波
広帯域多重複合波とは,1.1kHz~1.6kHzのランダムに変化する中周波刺激を用い,併せて0.5~10Hzの低頻度刺激を重畳させている両側性の非対称性矩形波である.下地ら2)は,広帯域多重複合波の疼痛緩和効果を,他の通電治療器の波形上の特徴から比較した(表1).その結果,一般の鍼刺激独特の持つビリビリという刺激感が少なく,他の治療器より除痛効果が得られたと報告している.その考察として,500Hz以上の刺激周波数になるとシナプスの不応期に入るために情報伝達のブロックが生ずる可能性があり,疼痛閾値が上昇するかもしれないことが推定された.また,0.5~10Hzの低頻度刺激が重畳することは,得気に類似した陰極刺激や低周波領域により生じている除痛効果もあることが考えられた.平野ら3)は,肩関節周囲炎に対する広帯域多重複合波通電の効果を通電群とプラセボ群に分け,筋力,可動域,VASを指標に検討した.その結果,筋力変化は認められなかったものの,可動域拡大と疼痛軽減に効果が認められたと報告している.
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