入門講座 理学療法ワンポイントアドバイス➏
筋力低下
臼田 滋
1
,
江﨑 重昭
2
,
川村 次郎
3
,
横山 仁志
4
,
山﨑 裕司
5
Usuda Shigeru
1
,
Ezaki Shigeaki
2
,
Yokoyama Hitoshi
4
1群馬大学医学部保健学科
2中山外科医院リハビリテーション科
3鈴鹿医療科学大学保健衛生学部理学療法学科
4聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
5高知リハビリテーション学院理学療法学科
pp.503-515
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100836
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筋力低下に対する過用に配慮した理学療法
群馬大学医学部保健学科
臼田 滋
筋力低下を示す患者に対して,理学療法を施行することで,悪影響を及ぼすことがあり,過用症候(overuse symp-tom)と誤用症候(misuse symptom)といわれる1).過用症候は,使いすぎによって生じる症候であり,例えば過度な強度による筋力増強運動によって,筋力の低下,関節痛あるいは筋痛などを生じる場合である.これに対して誤用症候は,誤った方法による筋力増強運動のために,関節に疼痛を生じる場合や,反張膝で長期間にわたり歩行をすることで膝関節痛を生じる場合などを示す.一般に活動性の低さによる廃用(dis-use)の弊害を重視し,種々の理学療法を施行するが,それらを含めた日常の活動量が少なすぎれば廃用を生じ,過度になれば過用症候を生じる.そのため,機能を維持・改善するためには,最適な負荷を与えるように配慮する必要がある.
組織に対する最適負荷
骨,軟骨,筋,腱,靱帯などの生体組織は,組織に加わる負荷(ストレス)によって影響される2,3).運動療法などによって加えられる最適な範囲内の強い負荷に対して,組織は肥大による適応を示すが,負荷が過剰になると損傷を来し,過少であれば萎縮による適応を示す(図).筋力の場合,一般に健常者では,通常の日常生活で最大筋力の20~30%の活動が求められ,20%以下では廃用性筋力低下を生じ,逆に筋力増強には30%以上の負荷が必要とされている4).しかし,身体状況によって,その最適負荷の範囲は異なり,筋力低下が著しい場合には,その範囲が狭くなると考えられる.
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