とびら
登山と臨床実習
山野 薫
1
1大分県立病院リハビリテーション科
pp.179
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100654
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毎年,初夏のくじゅう連山にはミヤマキリシマが咲き誇り,ピンク色に染まる一面の山肌は,言葉では言い表せない美しさです.私は家族や同僚らと鑑賞登山に出かけますが,近年は,その時期の実習学生も課外活動と称して連れて行きます.特に,県外出身の学生には,実習期間中の思い出にもなると思っています.登山は中学校以来だという学生も多く,登山行程の詳細が分からず,不安も大きいため,事前に私の娘(小学1年生)も参加する旨(小学1年生でも参加できる山登りであること)を伝えておくと,不安や緊張感も解けているようです.しかしながら,多くの学生は小学1年生よりもばててしまいます.その理由は,水分補給や血糖値安定化の失敗などです.もちろん,装備や靴,食料や飲料水について事前に連絡してありました.下山の途中,元気な小学1年生に行動食(キャラメルやビスケットなど)を分けてもらっている疲弊した表情の学生の姿に思わず苦笑しつつ,良い経験をしているなと感じてしまうのです.
さて,小学1年生が極端な疲労もなく下山できた一方,小学生に比べると何倍もの体力や知識を持っている学生は,大層な疲労で下山してきました.同じ山に登り,同じ行程を移動したのですが,この差は何が原因なのでしょう.1つめは,小学1年生は装備などが準備万端であったこと,2つめに登山の指導者(親である私)の,こまめな水分補給や栄養補給の指示に従っていたことが挙げられます.つまり,学生は未知の領域に対する準備不足,さらに指導に対する受け入れが不十分であったため致命的な失敗をしてしまったのです.
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