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近年,日本人の平均寿命は男女共に世界一を保っている.これは今日の高齢者が若年者であったころのライフスタイルと戦後の急速な医療の進歩によるところが大きい.しかし現在の若年者が高齢化したときにどのようになるかについてはだれも予測できない.現在わが国の主要疾病である,がん,虚血性心疾患,脳血管疾患,高血圧,糖尿病などの発症に生活習慣が深く関与することが医学的にも社会的にも問題になって久しいが,若年者の生活習慣,特に運動不足,摂取栄養の偏り,過食,夜型生活習慣,ストレス増大など生活習慣の改善の兆しはなく,むしろ若年者の生活習慣病の増加が指摘され,現在の若年者が高齢化したときについては悲観的予測のほうが多い.これらを背景に,2010年を目指したヘルスプロモーション運動として,健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)が平成12年度から開始されている1).ヘルスプロモーションの考え方は時代と共に変化し,最初は個々人の生活習慣の改善を意味していたが,現在では個人の努力に基づく生活改善に加えて社会的環境の改善によって健康の実現を目指すプロセスと考えられている.本稿では若年者の健康阻害要因,若年者の体力・運動能力の現状および身体活動・運動を中心とした若年者のヘルスプロモーションについて述べる.
現代社会の若年者における健康阻害要因(図1)
交通手段の発達,体を動かさなくてもいい都市型文化生活,テレビゲームやファミコンなど商業ベースにのった遊びの普及,遊び相手にも事欠く少子化,好きなものを好きなときに好きなだけとる食生活(偏食・過食),見かけ上のかっこ良さを求める風潮,受験をはじめとした競争の激化などの生活様式や社会環境の変化によって,運動不足,栄養の偏り・肥満・痩せ,夜型生活習慣,精神的ストレスの増大などの健康阻害要因がもたらされる.これらに喫煙,飲酒習慣も加わって,体力低下,予備力低下,抵抗力低下,脆弱化,肥満・痩せ,情緒不安定,意欲低下などの生活習慣病の予備状態となり,最終的に様々な疾患が発症する.
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