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家の近くにある川沿いの土手が菜の花で黄一色に染まった昨年の3月,私は仕事の都合で住み慣れた福岡の町を離れ,岡山へ引っ越しました.岡山には,学生時代(今から12年前)に“理学療法士”という共通の夢に向かって勉学を共にした友人が働いており,この巡り合わせになにか不思議な縁を感じました.その友人とは年に1度全国学会のときに会い,その夜はいつも焼酎(私はビール)を飲みながら語り合うのが恒例で,友人は心に残る話をしてくれます.ここではその中から一つ話を紹介したいと思います.
皆さん,「彼は脳性まひです」という日本文を英訳してみてください.“He is a cerebral palsy.”と答えられる方がほとんどだと思います.たしかに文法に誤りはありません.しかし欧米では,少なくとも理学療法士を含む医療に従事している人たちは,絶対にそのような英語を使うことはありません.それでは彼らはどう語るのでしょうか? 彼らは“He has cerebral palsy.”と語るのです.すなわち“is”は「彼=障害」を意味し,“has”は「彼=障害を持っている人」を意味するのです.もう一つ別の例を示しましょう.ニュースなどでアナウンサーが時々「障害者の方々が....」というような表現をしているのを耳にします.しかし,よく考えてみると,障害者の「者」は“人”を表す言葉で,その後の「方々」という言葉もまた“人”を表します.つまり,同じ意味の言葉が繰り返し使われているのです.これを正しく表現するならば「障害を持つ方々が...」といった表現などになるでしょう.このことは「障害者」の「者」という文字が“人”を表しているという認識が希薄であることを示しているのではないでしょうか.つまり日本では「障害者」と「障害」がほとんど同義語として使われているのではないかと感じられるのです.
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