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本研究の目的は,抵抗運動を施行した群と対照群(運動無)で膝関節痛と身体運動機能面に異なる影響がみられるか否かである.ランダム化された102人の変形性膝関節症(以下,膝OA)を,等尺性収縮群32人,ダイナミック群(求心性収縮)35人,対照群(運動介入なし)35人に分類し,評価として,アンケート記入,WOMACスケール,27段の階段昇降動作と床からの立ちしゃがみ動作の一連の時間を計測した.また,動作中の疼痛評価はvisual analog scaleを用いた.条件設定のため,下肢の運動介入を既に行っている者は除外した.
実験は,運動法をまとめた小冊子を対象者に配布し,その内容に従った運動を週3回×16週間行わせた.週3回のうち2回は自宅,1回はスタッフのいるトレーニング施設で行った.また機器の負荷では膝OA患者にとって過負荷であること,施設に行けない日でも自宅で行えることから,アイテムはセラバンドを用いた.なお6つの筋を対象とした.ダイナミック群に対してそれぞれの筋に2週目までは8回×1セットを行い,徐々に回数・セット数を増加させ,9~16週には12回×3セットを行った.等尺性収縮群に対しては,3~5秒間抵抗を保持させる方法で,運動頻度のプロトコールはダイナミック群と同様とした.結果は,等尺性収縮群で4つの機能性作業の実行時間が減少し,ダイナミック群では階段昇降時間が減少した.両方の群で膝疼痛が減少した.対照群は変化がなかった.等尺性収縮群の効果が高かった理由として,ダイナミック群は等尺性収縮群に比べエクササイズ後の疲労が大きかったこと,また効果判定に用いた評価用の運動種類が少なかったことも考えられる.さらに階段昇降の動作における関節角度が,等尺性収縮時の設定角度に近い角度となるため等尺性収縮群のほうがより効果があったと思われる.本研究での新たな発見として,今回の運動介入によって鎮痛目的の投薬消費量が減少した.
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