技術講座 生化学
血清アミロイドA(SAA)蛋白の臨床的意義と分子生物学的背景
香坂 隆夫
1
1国立小児病院小児医療研究センター免疫研究室
pp.679-686
発行日 1994年8月1日
Published Date 1994/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906581
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はじめに
アミロイド蛋白は2つの方面から注目を集めてきた.その第1はアミロイドーシスという疾患の沈着物質としてであり,第2は炎症蛋白としての側面である.
serum amyloid protein A(SAA)は急性炎症蛋白(acute phase protein)の一種であり,刺激に対する反応性の速いことや血中の増減幅が大きいことより炎症マーカーとして臨床的な面からも注目され,CRPとの相違が検討されてきた1).臨床的な面ではCRPより鋭敏であることより,ウイルス性疾患3)や局所炎症4),癌4),移植拒絶6,7)などのマーカーとしての応用が期待されている.しかしながら近年,炎症性サイトカインが同定され,肝よりの炎症蛋白の変動もこれらのサイトカインの変動によって規定されることが明らかとなっている8).したがってCRPとSAAをはじめとする炎症性蛋白の増減は,より上位のコントロール物質である炎症性サイトカインの変動の反映であり,同一の機序によって放出されている可能性が考えられる.SAAは炎症蛋白として古くから注目されてきたにもかかわらず,臨床的応用は遅れている.今回栄研化学より開発された免疫比濁法によって臨床応用が可能となった.測定法の問題点に触れるとともに今後の臨床応用の可能性,特にCRPとの相違について分子生物学研究まで掘り下げてその特徴を明らかにしたい.
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