増刊号 病理組織・細胞診のための日常染色法ガイダンス
4.多糖類の日常染色法
コロイド鉄染色(モーリイ変法)
田村 邦夫
pp.713-716
発行日 2001年6月15日
Published Date 2001/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905868
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コロイド鉄染色(colloid iron stain)は酸性粘液多糖類を染める染色法である.酸性粘液多糖類が鉄イオンとの間に親和性があることは古くから知られていた.本染色は酸性粘液多糖類に結合したコロイド状の水酸化第二鉄がフェロシアン化カリウムと反応としてプロシアブルーを生成する化学反応を利用するものである.この反応はヘイル(Hale)反応と呼ばれ,Fe2+とは反応せずにFe3+と鋭敏に反応するため,Fe3+に対する特異性が高いとされている.
一方,生体内で鉄はその大半は蛋白質などと結合して仮面鉄の形で存在しているため,鉄イオンとして遊離しているものは少ないとされている.このことから,鉄イオンを染め出すことによって間接的に酸性粘液多糖類を染め出す反応原理であるが,生体中で遊離鉄イオンの分布が少ないことから,本染色の陽性部は酸性粘液多糖類である確率が高くなることになる.ただし,肺などに見られるヘモジデリンを貪食した組織球は塩酸フェロシアン化カリウムと直接反応して偽陽性所見を示すものがある.これを除外するため,コロイド鉄液と反応させず,塩酸フェロシアン化カリウム液の操作から,反応させたコントロール切片で陽性部分が酸性粘液多糖類とは異なるものであることを確認しなければならない.
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